パワハラ・セクハラ
はじめに
パワハラやセクハラは、職場において様々な問題を生じさせます。
まず、被害者については、当然ながらセクハラやパワハラによって精神的・身体的苦痛を受けます。
そして、加害者本人ですが、発生した損害を賠償する責任があります。慰謝料というのが代表的ですが、被害者がうつ病を発症して休業した場合などは、その休業補償なども賠償の対象になってきます。そして、ハラスメントを行ったことにより、懲戒処分を受けると将来の昇進などにも響くことが予想されます。
次に、勤務先にとってですが、勤務先も賠償責任が発生する場合があります。これは、被害者と勤務先との間の労働契約上の義務のひとつとして、安全配慮義務・職場環境配慮義務といったものがあり、これの違反として賠償責任に問われることがあります。または、加害者の使用者としての不法行為責任を負う場合もあります。その他にも、もしあの職場ではセクハラやパワハラが横行しているという評判が広まってしまうと、社会的な信用も低下させます。それ以外にも、優秀な人材が集まらなくなり、将来的には勤務先の発展も阻害してしまいます。
このように見ていくと、ハラスメントというのが誰にも良い影響を与えないものであることが理解してもらえると思います。
パワハラ
パワハラとはどのようなものかという点ですが、法律上明確な定義はなく、裁判例でも確定的な定義はありません。ここでは、厚生労働省の報告に基づく定義を前提に、どのような行為をさすのか、見てみたいと思います。
パワハラ、すなわちパワーハラスメントとは、職場において行われる職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為と言われています。要はいじめの一種と捉えられているかもしれませんが、単なるいじめではなく、
- 職場内の優位性を背景にしている
- 業務の範囲を超えている
という2点が特徴とされています。
ここで、指導とパワハラの特徴を比較してみたいと思います。目的と手段と言う観点で考えると分かりやすいかと思います。
指導というのは、「こういうところがこう悪いのでこう改善してやろう」という業務改善にあります。そして、手段についても、相当性がなくてはいけません。
一方、パワハラというのは、目的が業務の改善というよりも、嫌悪感や人格否定が目的になってしまっているとパワハラにあたります。また、業務の改善が目的であっても、手段が不相当ならばパワハラにあたってしまいます。
つまり、正当な指導というためには、目的も手段も相当なものでなければなりません。逆にどちらか1つでも欠けたらパワハラにあたってしまいます。
ここで、人格否定とか、業務の改善を目的としないものがパワハラになることは想像していただけるかと思います。
セクハラ
セクシャルハラスメントの定義ですが、これも法律上明確にさだめられているわけではありませんが、一般的な定義としては、
職場において行われる相手の意に反する性的な言動
このように非常にシンプルな内容になっています。次に、この定義のポイントについて説明していきます。
「職場」の範囲ですが、本来的意味の職場は勤務先の事務所などですが、それに限らずとも、職場の懇親会や忘年会などであっても、実質的に職務の延長と考えられる場合は職場に該当します。職務との関連性や参加者の顔ぶれ、参加が強制か任意かなども関係しますが、ケースバイケースになってきますので、飲み会での発言には十分注意をして下さい。
次に、「相手の意に反する」という点ですが、相手は男性女性を問いませんし、同性間であってもセクハラが問題となることがあります。
そして、先程のパワハラと異なり、職場内の優位性とは関係がありません。そのため、単なる同僚間の会話であってもそれが職場において行われる限りは、セクハラの対象になります。そうはいっても、上下関係があるほうが認定されやすいので、上司の方は注意してください。