医療費(診療報酬)の未回収について
患者さんが医療費を支払わず病院・医療機関が医療費(診療報酬)を回収できないといういわゆる医療費の未収金が、昨今、大きな問題となっています。特に、医療費(診療報酬)支払うことができるだけの収入や財産があるにもかかわらず、あえて医療費(診療報酬)を支払わない患者(モンスターペイシェント)も増えています。
こういった医療費(診療報酬)の未収金の問題は、たとえ一つ一つの金額は小さくても、病院の経営にボディーブローのようにダメージを与えていきますし、医療機関・病院で勤務する職員の士気にも悪影響を及ぼします。また、あの医療機関・病院は、医療費(診療報酬)を支払わなくても、たいして請求もされず逃げ切れるなどという悪評がたった日には、目も当てられません。
大阪A&M法律事務所では、医療費の未収金の回収のアドバイス、お手伝いのみならず、発生させないためのアドバイスもさせて頂いております。まずは、お気軽にご相談ください。
医療費の回収方法
医療費(診療報酬)の未収金の回収方法は、未収金の金額や未収となってからの期間など状況によって変わってきます。しかしながら、医療費(診療報酬)の未収金が発生した直後からの対応についてルールを決めておけば、あとは、そのルールにしたがって対応をしていけば良いということになります。
大阪A&M法律事務所では、顧問契約を締結していただいている病院・医療機関については、このルール作りのお手伝い、ルール実行時のアドバイスを顧問料の範囲内でさせて頂きます。
もちろん、コスト、メリットを考慮し、法的手続きによる回収が必要ということになれば、別途費用を頂戴しますが、法的手続きによる回収のお手伝いもさせていただきます。昨今は、医療費(診療報酬)の未収金回収を成功報酬で専門的に受任している法律事務所もありますが、大阪A&M法律事務所では、各病院・医療機関のニーズに合わせた対応をさせていただいております。
医療費(診療報酬)未収金回収の手順(一例)
- 医療費(診療報酬)未収金の発生を漏らさず管理する
- 4週間後に電話、メールで督促をする
- 2週間後に文書による督促をする
- 2週間後、訪問による督促をする
- 2ヶ月後に法的手続きをとる
1.医療費(診療報酬)未収金の発生を漏らさず管理する
医療費(診療報酬)未収金の発生を漏らさず一括管理することが、未収金管理の出発点です。この未収金の管理が適切にできていないと、適切なタイミングで適切な請求ができませんし、消滅時効の直前にどたばたするなど結局、事務手続きの手間が増えてしまうことになります。
2.電話、メールで督促をする
医療費(診療報酬)未収金の発生が確認できた場合は、まずは、電話、メールなど費用のかからない方法で督促を行います。定期的に外来受信されている患者さんであれば、その際に直接声かけをすることも有効です。小さな金額であっても、芽が小さいうちから摘んでおくことが、大切です。
電話などで口頭で督促した際に、「今度支払うよ」などの回答があった場合には、「いつお支払いいただけますか」と、具体的な支払い時期を決めてもらうようにしましょう。そうすることで、先方に期限を明確に意識してもらうことができますし、こちらも次のステップに進むタイミングを決めることができます。
3.文書による督促をする
電話など口頭での督促で効果がなかった場合には、文書にて督促を行います。内容証明郵便で送ると本気度が伝わりやすいというメリットがありますが、費用がかかりますので、医療費(診療報酬)未収金の金額がいくら以上だったら内容証明郵便を使うなどとルールを作っておくと迷いがなく良いです。
文書の書式は、定型的なものを作っておけばスムーズですが、顧問契約を締結していただいた医療機関には、当事務所からひな形を提供いたします。
4.訪問による督促をする
職員の手間やストレスがかかりますので、ケースバイケースですが、直接対面して話をした方が、患者さんに支払わなければならないという気持ちをもってもらいやすいという面があることは否めません。特にご家族と同居しているような場合には、家族に知られたくないということもありますので、効果があることもあります。
医療費(診療報酬)未収金の金額、財産の状況などを加味し、必要に応じ行っていただければと思います。
医療費未回収を発生させないために
医療費(診療報酬)未収金の回収は、結構大変です。やはり、できるだけ発生しないように対策をたてることが肝要です。
救急外来で保険証を持参していない患者には、運転免許証など身分証を提示してもらい携帯電話の番号など、連絡先を把握してください。勤務先についても名前や連絡先を把握しておきましょう。給与の差し押さえ時などにも役立ちます。また、夜間などで、直ちに精算ができない場合には、預かり金を受領しておくことも重要です。
外来で、会計時に手持ちがないというような場合には、勤務先を含めた連絡先を把握することは同様として、「●月●日までにお支払いすることを約束します」というような誓約書をとりつけるようにしましょう。この誓約書についても、顧問契約を締結していただいた医療機関には、当事務所からひな形を提供いたします。
入院患者については、入院時に誓約書をとり、連帯保証人を確保するようにしましょう。また、預かり金を受領しておくことも有意義です。この誓約書や連帯保証人の念書についても、顧問契約を締結していただいた医療機関には、当事務所からひな形を提供いたします。
そもそもお金がないという患者さんについては、生活保護手続きを勧めるなど、速やかに行政との連携をとるようにしましょう。
医療費を回収するための法的手続き
1.民事調停
民事調停は、裁判所に選任された調停委員という市民が、裁判官のサポートを受けながら、話し合いでの解決を目指す手続きです。分割払いの合意など、現状に応じた解決が可能です。
任意での話し合いで合意までは至っていないが、合意にできそうな場合に有効です。
2.支払督促
書類審査のみで強制執行するための債務名義を取得することができる簡易な手続きです。裁判所に出頭する必要もありませんので、医療費(診療報酬)未収金の回収に有効な手続きです。
注意点としては、相手方である患者さんが異議を申し立てた場合に、通常の民事訴訟に手続きが移るのですが、その際の裁判所が、相手方である患者さんの住所地を管轄する裁判所となりますので、裁判所に出頭するための交通費を考えると、遠方の患者さんに支払い督促手続きを使うかは慎重な判断が必要です。
3.少額訴訟
少額訴訟は、60万以下の金銭の支払いを求める場合に認められる手続きで、原則として1回の期日で審理を終え判決がでますので、医療費(診療報酬)未収金の回収には、非常に使いやすい手続きです。
本来は病院の理事長が出頭する必要がありますが、弁護士が代理人として出頭することもできますし、事実上、事務長などが代理として出席することも可能です。
4.訴訟手続き
60万円以上の医療費(診療報酬)未収金の回収を行う場合には、通常の訴訟を行う必要があります。140万円以下の場合は、簡易裁判所が管轄で、それを超えると地方裁判所が管轄となります。
簡易裁判所では、事務長などが代理人として出頭することもできますが、地方裁判所では、弁護士しか代理人になれませんので、140万円を超える未収金の回収を求めて裁判をする場合には、弁護士にご依頼いただいた方が良いです。