院長の残業代の扱い
はじめに
複数の病院や診療所を経営する医療法人において、医師を雇用し病院や診療所の院長に拝命することがあります。この際の院長に対し、管理監督者として残業代を支払う必要がないのでしょうか。
院長が管理監督者に当たるのか否かが問題となります。
管理監督者とは
労働基準法では、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」については、労働時間や休憩、休日に関する同法の規定を適用しないと定められています(労働基準法第41条2号)。
これは、このような立場にある者は、立場に応じた高い報酬を受け取っており、労働時間の管理・監督権限があるので自身の労働時間は自らコントロールすることができるので、労働時間等についての規制を適用する必要がないということによります。一部の企業で、残業代を支払いたくないために、従業員に管理監督者であるような役職につけるということが横行し、裁判となった例も散見されます。
管理監督者について行政解釈上は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体の立場にある者をいうとされており、裁判例においても、①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること、②自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること、③一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金の処遇を与えられていることが要件とされています。
医療機関においても、院長に管理監督者性があるかについては、これらの基準に沿って判断することが求められますので、単に名称が院長だから残業代を支払う必要はないということではなく、実質的な権限についても検討することが必要ですので注意してください。