試用期間の途中、終了後に本採用拒否する場合の問題点
はじめに
しっかりと面接や試験を経て採用した職員であっても、実際に働いてもらうと、期待通りの働きができない職員は少なからず生じてしまいます。そのような場合に備え、採用に際し、試用期間を設けておき、試用期間内に能力の判断を行い、不十分と判断した場合に本採用を拒否することは、多くの企業で取り入れられていますし、法的にも、解約権が留保された労働契約として認められております。もっとも、試用期間途中又は終了後の本採用拒否を安易に認めることは、労働者の就業への期待を裏切るものでありがとうございます。無制限に認められるわけではありませんので、注意が必要です。
本採用拒否の有効要件
上述のように、試用期間といっても、本採用拒否が無制限に認められるわけではありません。この点、裁判例も踏まえますと、一般的には、解約権留保の趣旨や目的に照らし、採用拒否が①客観的に合理的な理由があり、②それが社会通念上相当であることが求められております。
まず、①の合理性についてですが、医療機関における裁判例においては、「原告のミスないし不手際は、いずれも、正確性を要請される医療機関においては見過ごせないものであり、原告の本病院における業務遂行能力ないし適格性の判断において相応のマイナス評価を受けるものである」などと判断されており、勤務先が医療機関であることなど個別具体的な事情を含めた判断がなされています。
また、②の社会通念上相当であることについては、従業員の問題改善への態度などから判断されていくことになります。
試用期間の長さ
試用期間の長さについては、基本的には当事者間の合意で決められることになりますが、1年を超えるものや、延長を繰り返す場合など、試用期間制度を濫用すると判断される場合には、試用期間中の本採用拒否が認められない可能性がでてきますので注意が必要です。
まとめ
試用期間制度は、採用時に労働者と適切に合意ができていれば有効ではありますが、本採用拒否には合理性、社会的相当性が必要となってきます。また、試用期間の延長については、更に、ハードルが高くなってきます。まずは、採用段階での労働者の評価を適切になすことが重要ですし、試用期間中の能力の見極めを社会通念に照らし適切に行うことが重要です。